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京阪神ミニシアターの現状とインディペンデント映画上映スキーム

02.08.2018

1月27日(土)、京都府文化博物館映像ホールにて「地域から次世代映画を考える~制作者の視点、上映者の視点~」が開催された。主催は今年創立10周年を迎えた立命館大学映像学部、そしてNPO法人独立映画鍋、京都府京都文化博物館、関西次世代映画ショーケース実行委員会。

 

シンポジウムの第2部では、「京阪神ミニシアターの現状とインディペンデント映画上映スキーム」と題し、川村健一郎さん(立命館大学映像学部教授)の司会により、「上映者の視点」としてインディペンデント映画の上映環境や、京阪神ミニシアターの取り組みなどが話し合われた。

 

登壇者は、早稲田大学基幹理工学部研究科講師の土田環さん、小説家の福永信さん、元第七藝術劇場支配人であり現在はフリーの映画宣伝をされている松村厚さん、出町座(京都)支配人の田中誠一さん、シネ・ヌーヴォ(大阪)支配人の山崎紀子さん、京都みなみ会館館長の吉田由利香さん、元町映画館(神戸)支配人の林未来さんの7名。

 

[インディペンデント映画の現状]


「インディペンデント映画」という言葉は非常に多義的であるが、「メジャーで配給・上映される以外の作品」と考えた時、確実に日本映画の公開本数を爆発的に底上げしている。実際に2003年には300本程度だった公開本数が、2013年には600本までに膨れ上がっており、そのうちの多くを日本のインディペンデント映画が担っているという。

 

早稲田大学基幹理工学部研究科講師 土田環さん

 

そのような状況について土田さんは、「日本映画というのはとにかくたくさん作られている、ただしその内訳の詳細が問題で、600本作られているけれども、富の再分配という面ではとてもねじれています。つまり、600本の邦画があって、そのほとんどの利益は本数にしてみれば15%ぐらいが大手の映画制作会社によってつくられているもので、残りの85%ぐらいの作品がシェアの方でもたった10%から15%ぐらいのところに群がっている。このままだと、誰も大手に行く以外に生活上は幸せになれないという現象が起きています。それでもこんなに映画が作られているんだからいいじゃんというのはありますけど、一つ言えることは多様な物というのは確実に失われるということは思います」

 

また、このような状況になったきっかけとして、「デジタルによる低予算化」と「大学に映画の学科が設立されるようになり、映画が特別なものではなく歴史化、一般化された」という2点を挙げ、「大学で制度化された映画というところで面白いものがあまり撮れないという自覚がかなり強くあります。でもそういう作品が賞を取る時代に突入した」と語った。

 

[観客は作品の情報をどのようにしてキャッチしている?]

 

インディペンデント映画とされる作品を、実際に劇場へ足を運んで観に行っていたという福永さん。どのようにして情報をキャッチしているかと問われ、「インディペンデント映画を観るぞという風に観ていないんですよ。面白そうだったら観に行こうとか、気付いたらもう終わっていたとか、そういうことの繰り返しです。」と述べ、『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』(2015)を知ったきっかけも「週刊読書人の時評で「ゴダールが現れた」というのを見て、それにつられて立誠シネマに向かうという縁が出来ました。見つけるべきすごく自分の好きな映画だったのですが、自分が好きな映画を見つけることすら偶然というか、タイミングに左右されているんだなと思っています」と語った。

 

その後、インディペンデント映画の現状について、各劇場支配人より2017年度(立誠シネマのみ2016年度)の年間上映本数と、その中でインディペンデント映画(自主映画)が占める本数および興行収入の割合が実際のデータに基づき発表された。

 

 

各館に共通して「劇場全体の上映本数のうち、自主映画の上映本数は約20%」しかし、「劇場全体の興行収入のうち、自主映画の興行収入は約10%」であることが明らかとなった。つまり、赤字であり、この状態が続くと劇場の経営を圧迫する。吉田支配人は「空族(くぞく)の作品を抜くと、インディペンデント映画の興行は11%から9%になってしまう」と一部の作品が興行収入を補っているという現状も伝えた。

 

[どのようにしてインディペンデント映画を後押ししていけばよいのか?]

 

松村さんからは、宣伝力がないスキームで動かざるを得ない現状が語られた。

 

映画宣伝 松村厚さん

 

「お祭り的に東京で上映できればいいやという志の低さというか、結局それは金銭の問題じゃないですか。たとえ配給会社が付いて宣伝予算を立てても、ほとんどを東京で使いきってしまうとか。お金がないなら劇場と直接やりとりしようとなった場合に、とりあえず劇場側が編成して組めば上映できるんですけど、毎日2~3人の状況。それでも、ミニシアターがやるべきことは、興行的には厳しいかもしれないけど、作家を見つけ出して、応援していくという役目。それを放棄せざるをえない状況になってしまった場合、存在意義があるのか」

 

 京都みなみ会館館長 吉田由利香さん

 

これに対して吉田館長は、「劇場側がこれからの人を見つけられた瞬間がいくつかあると思うんですけれども。とにかくオファーされる作品数がものすごく多いんですよね。卒業制作の作品とかもどんどん送られてきている状態で、それら全部を見て、ひも解いて、新しい人を見つけるというところまでには至れていない。一本一本に対して愛情を持って育てることが出来ていない状態であって、それがダイレクトに興行収入の減少につながっているとは思います」と述べた。

 

[それでも上映し続けるのは「映画は文化だ」という自負があるから]

 

インディペンデント作品が溢れ、出口となるミニシアターも抱えきれない状況に陥っていることが分かった。結果的に動員が少なく劇場経営を圧迫する作品があり、それ以前に優れた作品であっても見つけ出される前に終わってしまうことも多いようだ。

 

 出町座支配人 田中誠一さん

 

出町座の田中支配人は、「劇場というのは、お客さんが映画観ていただいたことを収入にして成り立っているということが大前提なので、お客さんが来ていただけない作品というのは、商売の観点からすれば切っていかざるを得ないんですよ。それでもインディペンデント系の映画というのをかけ続けなきゃいけないと思っているというのは、やはりビジネスでもあるけれども文化でもあるということを本当に強く思っているから。劇場に来ていただけるお客さんと文化の場を共有するということをこれからも維持していきたいし、もっと良くしていきたいという気持ちが強いということです」と述べた。

 

[京阪神ミニシアターによる新たな取り組み]

 

終盤には、今回のイベントのタイトルにも入っている「次世代映画」とは何か、さらに「関西次世代映画ショーケース」とはどういうものなのか、林支配人から説明があった。

 

元町映画館支配人 林未来さん

 

「インディペンデント映画や自主映画など、多義的でそれぞれ何と言っていいのかという部分はあるんですけれども、そういう映画たちを諦めたくないと劇場は思っているということなんですね。というのは、やはり新しい発見をさせてくれる、新しい価値観を見出してくれる、そんな映画がその中にたくさんあるからなんです。でも、私たちがいくらこの映画は素晴らしいと思っていても、ただただお客さんが入らない、お客さんが入らないと興行が成り立たない、成り立たないとそういう映画がなかなかできない状況にしかなりえない。作品の良し悪し、制作者の頑張りという以前に、そこにたどり着くまでの道のりが狭すぎるというところで、まずお客さんに選ばれてないというか、知られていないっていうことなんですよね。そういった映画を私たちもこれから積極的に紹介していくために、お客さんにもっとわかりやすいおすすめ印をつけようというのが今回の企画です」

 

「インディペンデントっていうと言葉にも色がついているし、多義的なものであるので、人によってやっぱり捉え方が違ってしまう部分もあるので、新しい価値観として、「次世代映画」という言葉を作って、私たち劇場のスタッフが、自信を持ってこれをお客さんに観てほしいというおすすめ印の代わりに、この次世代映画っていうラベル付けをしていこうかなと思っています」と思いを述べた。

 

田中支配人は、「関西次世代映画ショーケースというタグ付けをさせていただきたいということなんですよ。上からお墨付きをしますとかそういうことではなくて、作品の評価とかそういうこととはまた違うと考えていただきたいんです。我々映画を上映するということを生業にしている者が、「この映画は上映してお客さんと共有したいもの」ということです。」と付け加えた。

 

今後は、年間に約10本程度「次世代映画」の印をつけ、絶対に観てほしい映画である意思表示をしていき、年に1回は映画祭のようなものを実施し「次世代映画」にもっと触れてもらう機会を増やす予定だという。

 

 

その後、各劇場がこれまでにも「どうしてもお客さんと共有したい」と思って上映してきた次世代映画の例となる作品を発表。田中支配人は、毎年年末に上映し続けている『FORMA』を挙げ、昨年も本作を上映するために出町座のオープンを12月に決めたという。続いて、山崎支配人はシネ・ヌーヴォでの上映をきっかけに全国へと広まっていった自信作『鉱 ARAGANE』、吉田館長は「次世代映画」第一弾の候補として挙がっている『月夜釜合戦』、林支配人は昨年末に3度目の上映を行った『ハッピーアワー』をそれぞれ挙げた。

 

最後に、このような京阪神ミニシアターの取り組みに対してどのように感じるかと聞かれ、福永さんは「こんなにどう考えても面白い支配人たちが映画館をやっているんだということを、今日初めてお顔を拝見してお話を聞きながら思ったので、「関西次世代映画館支配人ショーケース」のような、もっとご本人たちも今こんな映画がおすすめというのを生のトークでやってほしい」続けて、「僕は立誠シネマで『FORMA』のチラシを観た時に、ピンときませんでした。でも田中さんがものすごく勧めるし、年に1回ここでしかやらないというから、騙されたと思って行ったんですよ。最初は本当に騙されたと思いましたけど(笑)。(田中さんが)前振りのトークまでするんです。それがすごく良くて。まるで映画の一部のような。そこまでしないと映画は観に行かないもんだなと。行って本当に良かったし、あれはDVDにもならないということなので、また、しかも次の年まで待たないといけないみたいな。そういう楽しみが持てるということを教えてくれるのも劇場の支配人や、映画館を実際にやっている連中なんだなというのを、こういうラベルを張りましょうという行為を含めて、すごくよくわかりました。その効果はともかく、何か新しいことをやろうという映画館支配人たちの考えや意気込みというのが伝わってきて良かったです」と述べた。

 

土田さんは、「何かが権威付けをするという形をミニシアターでやるというのは、私個人は好きではないです。そうなってほしくないなというのは強くあります。また、これをネットワークにしていった時に、これまでもミニシアター同士の非常に小さなチェーンのようなものであったり、単館拡大みたいな言い方もあり、そういうものは従来からあったわけなので、果たしてそれがシステムとしてどう違うのかというのは僕には少しわかりませんでした。」とし、

「批評や宣伝の側も、人を映画館に誘う言葉が非常に弱くなってきていると思うんですね。そういうところに「関西次世代映画ショーケース」が貢献するためには、逆にもっとローカリティを高めた方がいいんじゃないかと思います。プログラムを見てもそれぞれが全然違うことをやっているなというのはよく伝わってくるので、そこで差別化しているだろうし、やりたいことをやりたいようにやっているから伝わっている。逆に東京では情報がいっぱいあって、動きにくくて、あまりそういうことが映画館として打ち出せないと思うので、関西などの方がローカリティをあえて強く出す方が良いのではないかと思いました」とまとめた。

 

シネ・ヌーヴォ支配人 山崎紀子さん

 

山崎支配人は、「利益や野心があるわけでもなく、ただ本当にお客さんに観てほしい作品になってくると思います。インディペンデント映画と言われる映画の割合の半分しか興行収入が上がってないということは、その半分はまた別の映画や特集上映で補っているということになんですよね。そういった状況も打破していかないと、他の映画と並べるような位置にはなれないんじゃないかなとも思っています。なので、関西次世代映画ショーケースは劇場でも力を入れて頑張りたいと思っているので、ぜひ注目していただきたいです」と抱負を語り、第1部から約6時間に及んだイベントは締めくくられた。

 

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