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『湾生回家』ホァン・ミンチェン監督インタビュー (後編:台湾と日本)

01.28.2017

戦時期台湾で生まれ、戦後祖国日本へ引き揚げることとなった「湾生」たちを描いた『湾生回家』ホァン・ミンチェン監督インタビュー後編。(前編はこちら→)今回は監督からチア部へ逆質問も!?そして、かつては日本の植民地であった台湾と日本の関係をどう捉えるか―監督の考えに迫りました。

 [ホァン・ミンチェン監督(右)と映画チア部・まな(左)]

 

「歴史」ではなく、そこで生きた「人」の心の動きを描く

まな:本作は歴史や政治的な背景というよりも、そのなかで生きていた「人」や「人と人のつながり」を中心に丁寧に描いていることが印象的でした。

 

ホァン:個人的な思いですが、自分は歴史そのものに興味があるわけでなく、学校の授業で習う歴史というのは自分からすごく離れたところにあるように感じていました。自分が学校で習ったのは中国の歴史や地理であって、台湾のものではありませんでした。だから、歴史というのは自分に密接したものではなく、自分から遠いものになってしまいました。多くの台湾の人がそう感じているのではないでしょうか。だから、歴史という面ではなく、あくまでも人の感情という面から切り込んでいきたかった。人の考えが、戦争を通じて、その場所にいて、どう変わっていくのか。そういった人の心の動きに興味を持ちました。

 

まな:人の心の動きを主軸に描いたことで、歴史に興味がない人にとっても、自身のアイデンティティの問題など別の面から、興味を持つことのできる作品になっていると思います。

 

台湾と日本の関係について

ホァン:逆に質問をしてもいいですか?僕が日本で会った観客のなかでは、あなたが一番若い観客です(インタビュー時まなは20歳)。この『湾生回家』のなかで、あなたは何を見つけましたか?何を感じましたか?

 

まな:私は大学で歴史を学んでいます。その上で台湾の映画を観て、日本は台湾を統治していた時代があったにもかかわらず、自分は台湾のことを何も知らないな、と感じていました。そうして台湾についてもっと知りたいという気持ちから台湾の映画をますます観るようになって、この作品も観たいと思ったんです。この作品を観た時に、湾生の方たちが抱えていた「自分は何者なのか」という問いに共感を覚えました。私は今20歳で…この先どんな職業に就いて、また、自分には何ができるのだろうかと考えていたところだったので、この問は自分の心に強く響きました。また、これまでは日本が統治をしていたというイメージが強かったのですが、本作を観ると日本人や湾生の人たちと台湾の人たちの間に、共に生きようとしていた面があったことが分かり、そういったところが、現在の日本と台湾の姿と少し重なりました。

 

ホァン:台湾と日本はやはり微妙な関係にあって、それはきっとこの時代からあるものではないでしょうか。自分も疑問に思うところですが、台湾は日本の植民地となって、台湾の人たちは被害者でもあって、ある角度からいうと日本は加害者であったわけですが、でも被害者がこんなに加害者のことを好きなのは何故だろう、と。それを撮影の過程のなかで探してみたいと思っていました。

 

まな:探してみて、何か答えは見つかったのでしょうか?

 

ホァン:大まかな答えは見つかりましたが…それも自分の推測であって、答えになっているかはわかりません。聞きたいですか?

 

まな:是非!お願いします。

 

ホァン:何が幸福であるかということです。幸福とは、比較のなかで感じ取れるものです。昨日より今日のほうが良ければ、幸福だと感じることができます。日本が統治していた時代を懐かしく思うというのも、これも比較のなかから出てきたものです。台湾の人も、日本の統治が終わった時に「これからは自分たちの時代だ!」と思ったかもしれません。けれど、その後にやってきた人たち―誰か分かりますよね?この人たちは、台湾の人たちが思っていた人たちではなかった。なので、幸福とは、比較のなかで生まれるものかもしれません。

 

まな:それは確実にあると思います。

 

ホァン:友達の話を聞いたり、自分で考えるなかで感じたことです。この作品のなかで、誰が

良くて誰が良くないか、ということを評価したいわけではありません。なにか風刺したいとか、棘がある作品ではないので。ある人がこの作品を観て「台湾の人たちはすごく包容力がある」と感じたそうです。まず、この作品のなかで話される70%が日本語になるんですね。そこで、これを台湾の監督が撮るということに対して、どう思われるのだろうと考えたこともあります。別に、日本の監督が撮ってもいいのではないのかと。なので、日本の監督がこれを撮ったらどうなっただろう、というのは関心があります。

 

たくさんの若い人たちに観てほしい

まな:日本では、もちろん多くの方々に観ていただきたいと思いますが、特にどんな人たちにこの作品を観てほしいですか?

 

ホァン:商業的な立場からもそうですが―、そのような立場を超えても、やはりこれから交友を進めていく若い人たちにこの作品を観てほしいですね。

『湾生回家』は、関西では神戸の元町映画館、大阪シネ・ヌーヴォにて絶賛上映中。両館ともに2/10(金)まで上映予定。

 

 

 

作品情報 ■ 『湾生回家』(公式HP:http://wansei.com/index.html

敗戦によって台湾から日本本土へ強制送還された日本人は、軍人・軍属を含め50万人近かったと言われています。彼らの多くにとって、台湾は仮の住まいの土地ではなく、一生涯を送るはずの土地でした。しかし残ることはできず、その願いはかないませんでした。そこで生まれ育った約20万人の「湾生」と言われる日本人にとって、台湾は紛れもなく大切な「故郷」でした。しかし、彼らは敗戦という歴史の転換によって故郷から引き裂かれ、未知の祖国・日本へ戻されたのです。『湾生回家』は、そんな「湾生」たちの望郷の念をすくい取った台湾のドキュメンタリー映画です。異境の地となってしまった故郷への里帰りの記録です。ホァン・ミンチェン監督をはじめ製作スタッフは、戦後70年という長い年月を経るなかで、かつて20万人と言われた「湾生」が高齢化して、「湾生」が忘れ去られようとしている現在、台湾の人々の心とまなざしで、彼らの人生を、引揚者の想いを記録しました。(公式HPより)

 

Profile ■ ホァン・ミンチェン

台湾のアカデミー賞といわれる金馬奨で、1998年に最優秀短編作品賞を受賞した『トゥー・ヤング』(第14回東京国際映画祭上映)で注目される。本作では、プロデューサーが同郷であった縁で監督に抜擢される。当初「湾生」を全く知らなかったが、「湾生」たちとの触れあいの中で、彼らの中に潜むドラマを発見し、「湾生」たちが戦後の混乱をどう生き延びたのか、 また、台湾でどんな生活を送り、台湾のことをどう思っているのか、「湾生」たちの孤独な心情に寄り添い、彼らの目線に立って本作を完成させた。

昨年、新作『傻瓜向錢衝』が台湾で公開され好評を博している。

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