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映画の製作から劇場公開にいたるまで、全てを一度自分でやってみる。『Every Day』手塚悟監督インタビュー

12.05.2016

12/10(土)~12/16(金)の1週間、大阪は第七藝術劇場、兵庫は元町映画館で公開される映画『Every Day』。本作は『つるかめのように』『こぼれる』などの短編作品を手がけてきた手塚悟監督の初の長編監督作品です。一筋縄ではいかなかった映画製作から劇場公開、地方上映に至るまでー。手塚監督にたっぷり語っていただきました。

 

 手塚悟監督

 

冨士原さんの原作との出会いは、衝突事故に近い。

--手塚悟監督の初長編作品である『Every Day』ですが、製作が始まってから完成までにかなり時間がかかったとお聞きしました。また、初めての長編作品でアーティストの楽曲をもとに映画を作り出す、というのもユニークだと思いました。本作で音楽を担当されているharuka nakamuraさんのことは以前からご存じだったんですか?

 

 

いえ、知らなかったです。順番に言うと、mixiがめちゃくちゃはやってた時期があって、その時に原作の冨士原さんがmixiに最初に載せていたんですよね、元となる文章を。一週間かけて毎日1話ずつお話が積みあがっていって、最終話が終わった時に僕はその熱意のままオファーした、というのが最初です。そこで冨士原さんからこれは実はharuka nakamuraさんという方の「every day」という曲があって、そこから着想したものなんですよとお返事をいただいて。その時にharuka nakamuraさんのことは初めて知りました。

 

--僕も今回初めてharuka nakamuraさんの存在を知って、何曲か聞いてみたんですけど、ほとんどインストですよね。

 

 

そうですね。ほぼインストです。haruka nakamuraさん自体のアーティストとしてデビューするまでの経緯がすごい偶然に偶然が重なって、という感じで。いわゆる天才肌の方なんですけど。彼が一番最初に作ったのが「every day」らしくて。それをアルバムの1曲目にしているというちょっと象徴的な曲で。

 

--最初に別の原作があって、それを読んだ段階でこれは自分の長編デビュー作にしたいと思われたんですよね。

 

 

そうですね、単純に直感の部分もあるんですけど。原型はほぼ一緒なんですよ、三井くんと咲ちゃんの2人の1週間の日々で、1週間が終わる時にはある別れが来るっていうところに向かってお話が進んでいくんです。

 

もともと冨士原さんってこんな話を書くタイプの方ではなく、もっと破滅型の終末世界みたいなものを書くのが得意な方で。そういう方が何故か反対の作品を書いたってことに僕も新鮮な驚きがあったし。言葉が達者なんですよ、まず。セリフがすごい魅力的なのでそこに惹かれるように自分の持ち味と掛け合わせたらどうなるかなと想像した時に、いいんじゃないかなって思いました。

 

当時は『つるかめのように』という短編を発表したばかりの時期で、大学を卒業して2、3年撮れない時期が続いた中で久しぶりに発表した作品だから、個人的にはこの作品でもう終わっちゃう覚悟もありました。そして少し落ち着いたタイミングでこの物語を読んで、何か猛烈に作りたい欲と何かがぶつかって、というところでは衝突事故と近い感覚ですよね。真正面からぶつかったと言いますか。

 

--それが2008年の秋ですよね。そこから製作に至るまでどういう風に話を進めていったのでしょうか?

 

 

これは冨士原さんもこれまでのインタビューでおっしゃているんですけど、僕がお声がけさせていただく前にも何度か映像化させてくださいというお話があったらしいんです。けれどどれもことごとく立ち消えになってしまって。だから冨士原さんはまたそんな感じだろうと軽くいいですよと返事をしたらしいんですけど、僕はそこは揺るがなかったので。

 

とは言え、僕は当時短編しか作ったこともなかったし作れる能力もなかったので、冨士原さんに「脚本も書けるなら1本試してみませんか?」ということで僕と冨士原さんで『こぼれる』という短編を作っています。これは僕と冨士原さんの共同脚本で、ここで一度練習させてもらった、という感じですね。おかげさまでその作品が全国の映画祭でちょこちょこと上映していただけて手ごたえを感じた、というのがあってじゃあ行きますか、という流れで。

 

年数で言うと2008年に僕が『つるかめ』を発表して同じ年に冨士原さんが原作を書かれて、『こぼれる』が2011年の発表なんです。他の作品を作りながら『Every Day』を横に見ながらやっている時期があって、ひと段落してじゃあ作りましょうとなって。最初の打ち合わせが2011年の3月11日なんですよ。打ち合わせしようと思ったら地震が来て出来なくなって、いろいろ遅れていくんですけれども。前半戦はそんな感じです。

 

11年の夏には準備はやってるんですよ、仮のキャストも組んでテストで映像も作ったりしながら脚本の直しが入るんですけど・・・やっぱり震災後ってなかなかセンシティブだったじゃないですか?これをやったらどういう表現になるのか、とかを考えながら。脚本上でいじりながらそういう時期が1年ぐらい続きましたね。すぐに撮れないってなって順番が変わって、『WATER』っていう作品を『Every Day』の前に撮ることになるんです。それをやっていたらやっぱり意外と時間を食っちゃって。2012年いっぱいずっと使っちゃったので。

 

でも僕も同じように作ってるだけだと馬鹿になっちゃうので、『こぼれる』の時は冨士原さんと共同脚本をして、『WATER』の時は『Every Day』を見据えたスタッフを組みました。2013年の春に『Every Day』がクランクインして、だいたい1年かけて撮影が行われて、間に『WATER』に関連したイベントもあったのでそれもして、2014年の春ぐらいから編集を予定していたんですけど、そこで僕が病気で倒れちゃったんです。

 

--やはりかなりの紆余曲折があったんですね。

 

 

ですね・・・。基本的に冨士原さんからシナリオのOKが出るのがすごい厳しくて。原作に当たるテキストとの改変で言うと、津嶋ちゃんの役どころがもともと三井との浮気相手で、そこに対して僕がどうしても共感できない最後のポイントだったんです。

 

事前にシナリオを読んでもらった女性の反応だとかスタッフに話を聞いて、三井に対して周りのみんなが甘すぎるだとか、シナリオ上の甘さを詰めなきゃいけない時期が一番大変だったのかなという気がしますね。駆け足で言ってますけど、『こぼれる』を発表してから2012年の年末までは冨士原さんとそういうやり取りをずっとしていて。どうにかOKが取り付けられないかというところで、その途中できなこちゃんや菊地ってキャラクターが生まれたりしました。それは震災を挟んで生まれました。

 

 

 左から、菊地(倉田大輔)ときなこちゃん(こいけけいこ)。このカップルが好きだという観客も多く、手塚監督もこの2人の番外編を作りたいというほど気に入っている。

デビュー作を大事にしないやつは、2本目に続かない

--僕の勝手なイメージなんですが、映画監督のデビューっていうのは劇場公開をすることがやはりデビューっいうことになりますか?映画祭への出品とかではなく。

 

 

そうですね、少なくとも僕はそういう風に捉えています。あと、僕は映画祭と非常に相性が悪いっていう実感があって。

 

--そうなんですか(笑)

 

 

こういう言い方は良くないかもしれないんですが、僕の作風ってウェルメイドというか、ちょっと優しい話というか。見ようによっては物足りないと感じたり。もちろん実際問題として物足りなさを感じさせてしまう部分もあるとは思います。僕自身まだまだだと思っているので。それはあるのですが、映画祭という枠の中で考えると血がバーンと出るとか暴力描写であったりとか、強烈な個性というのは正直自分の中には持ち合わせていないと思っているので、そういう意味では映画祭にはハマんないっていうのは僕は短編を映画祭に出品して感じてきたので。

 

じゃあどうしよう、って考えた時にお客さんの反応は最初の『つるかめ』の時から自分が注目して見ていたところで。審査員には受けてないけどお客さんの反応はちゃんとあるって感じてきたので、向くべき方向は映画祭の審査員じゃなくてお客さんであるっていうのは明確に思ってやってきたので。ようやく会うべき人に会っているという。大変なんですけど、劇場に営業していくのは。ただ、僕個人の精神的な健康状態はすごい良くて。ドMなのかドSなのかよくわかんないんですけど(笑)

 

--イメージ的にやっぱり自分のデビュー作はストーリーや脚本自体も自分で考えたものでデビューしたい、っていうのがあると思うんです。本作は「監督・脚本・編集 手塚悟」となっていますが、もともとは冨士原さんという別の方が書いた原作が存在していた。あえてというか、自分のデビュー作を他の人の作品でやろうと思ったのはどういった理由があるのでしょうか?

 

 

たぶん僕が一人っ子というのもあって人との別れというのが爆弾に近いような感じがしていて。切ないというよりも恐怖に近いものがあるんです。そういうものをテーマにしたものを最初から好んで無意識に作っていて、自分の生理的にはすごい自然っていうのはあったんです。そういう中でこの作品に出会っているので余計にガツンと響いたものがあったんですよね。

 

原作自体は、冨士原さんもよくおっしゃっていますが、当時お別れになった彼女のことを思って残酷だけれども恋愛の整理みたいな部分が強かったらしく、まさか作品になると思っていなかったらしくて。僕が作品にしたいという事で冨士原さんを口説き落とした時に言ったことがあって。それは当時震災が起きた時に僕がいいなと思った「ただいま」「おかえり」のやり取りの部分で。いま一番大事なのはここの部分だから、お別れに対しての気持ち悪さとか、恋人とのやり取りの・・・浮気がどうたらで気持ち悪い、みたいなのは絶対にあっちゃいけないという所で、大きく改変しているんですよね。

 

だから人の名前はお借りいただいていますけど、映画『Every Day』はオリジナルに近い状態ではあります。原作とは言っていただいているんですけど。そこはかなりご理解をいただいているので。いわば共作に近いですよね。

 

--『Every Day』の製作が決まった段階では、いつまでに完成とか、いつ頃に映画祭に出品したり劇場公開したりっていうスケジュールは決まってなかったんですか?

 

 

最初はそうですね。でも撮影が始まるタイミングではある程度は決めていましたね。予定より1年遅れてしまっているんですけど。普段営業をやられている方がスタッフでついてくださってたので、「手塚君ね、こういうスケジュールを組むってことはこれぐらいの費用がかかるから、こういう流れでやっていかないと後々100万200万と追加でお金がかかっちゃうからね」っていうようなことを刷り込まれていたので(笑)毎週集まってそういうことについて話す時期がありました。そういったことは僕1人の力ではとても出来ることではないので、周りの素敵な大人たちに感謝です。しかも映画のプロじゃないんですよね。

 

--普段映画に関わっていない方も動いてくれたという事は、やはり手塚監督の誠意というのが伝わったからなのではないかと思います。

 

 

目をかけてもらっているということだと思います。力を貸していただいた方々に返せることとして、いい作品を作るというのは最低限の事項としてあるので、そうなると見るお客さんの趣味・嗜好というのに寄っていくので、映画祭にはまらないっていう部分を短所と取るか長所と取るかというところで僕は思い切って長所に捉えるという風に舵をきってみました。お客さんの反応はちゃんとあったので。

 

そもそも僕は山梨の片田舎で生まれ育って、映画祭がどうこうなんて何も知らずに育ってきたんですよ。最初に好きになった映画がジャッキー・チェンの映画っていう、非常に分かりやすいもので。東京みたいにミニシアターがどうだっていうのも全く知らずに高校生までやってきたので。そういう素養がある意味うまく活きているのかなと思います。

 

--『Every Day』に関しては撮影している段階から宣伝についても考えていたのですか?

 

 

そこはけっこうずる賢く考えていきました。音楽を担当されたharuka nakamuraさんの人気もすごいあって、足りないのは僕自身のネームバリューぐらいで。キャストの方に関しても実力があるのはもちろんだけどある程度人気がないと劇場公開には耐えられないだろうというところで考えていって。でも個人レベルでお声がけしていくには限界がある、って考えていたところで永野さんと山本さんのツートップで行こうと決まって。

 

その時に他のキャスティングに関しても舞台で活躍されている役者さんに出ていただくのは自然だなと思いました。脚本を書いている段階で勝手に頭の中でキャスティングはしてたんですけど。主役の2人を引き立てられる役者さんってどんな方たちだろうかと、自分が好きな俳優さんをばーっと出して組んでいって、オファーしたら今回はほぼ思っていた通りに演じていただくことになりまして万々歳でした。

 

やっぱりただ「役者やってます」だけだとお客さんが来ないので、引きを作るためにいちばんいいところのバランスを考えると今回のキャスティングになりました。やっぱり役者さんのスケジュールなどの問題で第1希望に決まらないっていうことも多々あるとは思うんですが、今回はそういうことは知らないっていうことを盾にしてやっていきました。結果的に今回の劇場公開に結びついたのもそういう戦略が功を奏したのではないかなと思っています。

 

--これもまた勝手なイメージなのですが、監督というのは映画を作ることに専念して、宣伝は配給会社さんだったり別の方がやるものなのかなと思います。簡単な言葉を使うと監督は自分の作家性を追求する存在というか。そういった意味で考えると手塚監督の作品はいわゆる映画好きが求めるような作家性というのは・・・

 

 

ないですね。作家性というのは個人的には否定派というか。隠しても出てきたりするものが作家性だと思うので。そういうのは観てもらったお客さんがこれが手塚の作家性か、と思ってもらうぐらいがちょうどいいかなと思っています。

 

僕の自覚としては自分にそういった作家性は求められていないと思うので、じゃあどうするかってところで『Every Day』に関しては色々と考えてきました。本来はちゃんと配給会社だったり宣伝マンを5、6人つけたりっていうのが正しい映画のあり方だとは思うんですけど。今回は自分で劇場さんに電話して営業をかけて、ってやっています。

 

これがずっと続くのは嫌だっていうのもあります(笑)本当はやりたくないです。きついので。でもきついんですけど、デビュー作を大事にしないやつは2本目に続かないっていうのは僕の信頼するスタッフからの言葉なので、だったら最大限やることはやって、ダメだったら仕方ないっていう行動原理でいま全国飛び回っています。

 

--今年は『君の名は。』や『シン・ゴジラ』が大ヒットしましたけど、新海さんであったり庵野さんであったり、すごいクセの強い方ですよね。でもこれだけ多くの人に観られていて。映画ファンの持つイメージとして、映画はやはり監督のもの、っていうのがあると思うんですけど、最近はそんなこともないんじゃないかなと思ったりしています。映画監督という人たち自身にブランド的な価値があったのがやはりもう前の時代なのかなと。単純に監督の作家性というものだけで映画ってアピールするものでもないのかなと思って。知りもしない人の話なんて聞きたくもないというか。

 

 

そうですね・・・。さっきもお話したように、本来であれば配給会社をつけるというのが映画自体の認知度につながるので、今回の『Every Day』の宣伝が正しいのか、というとグレーゾーンであるとは思っていて。正しいと思ってやってはいるんですけどどこか後ろめたさも感じていて。

 

でも、多様化している時代に対して昔のままでいいのかというのは僕のちょっとした怒りみたいな部分があって。映画界が悪いとかではなく、スマートフォンでも映像作品が観られる時代に映画が求められているものって何なんだろうって突きつけられている気がしますし。特に日本で作家性はそこまで重視されないっていう悲しい現実もありますし。『君の名は。』を観た人たちがどれくらい新海さんの名前を言えるのか、っていうと悲しい結果になるような気がします。

 

--アニメはそこはまだけっこう知られているんじゃないですかね。監督の名前は。

 

 

そうですね、アニメはそうだと思いますが、実写は厳しいですよね。満員になっている映画でも、どれくらい監督の名前で観に来たかというと多分そこまでいないと思います。そういった状況の中で『Every Day』のような小さな作品をどう売り込んでいくのか、というのは違いを出していくしかないので・・・もちろんこれが正解だ!というのは僕もまだ見つけられてはいないんですけど。でも、僕はそれぞれの劇場さんで観てくださったお客さんの顔は覚えているので、その点はいま同じぐらいの規模でやっている監督さんの中で誰よりも自信があります。

 

--当たり前な話かもしれませんが、手塚監督はやはり劇場で観てもらったお客さんが一番大事ですか?

 

 

そうですね。やはり観てもらったお客さんからお金をいただいて僕らも生活したり次の作品に繋げたりするわけなので。そこを重視しないと産業として成り立たないので。もちろん作家性を追求する監督さんもいていいんですけど、多様性の中でみんながそれぞれの立場で頑張らないといけないんですけど、どうしてもみんな一緒にやりたがるので。そこに疑問を抱きつつ小規模で抗っています。

 

--映画ファンが若手の映画監督、特にミニシアターでかかるような監督の作品に求めているものってやっぱり「作家性」だと思うんです。でも、いま映像自体誰でも作れるし、発表する場所もたくさんある中で「ミニシアターでかかっている作品だから"作家性"の強いものじゃないと駄目だ」みたいなものは、もういんんじゃないかなと思ったりします。ミニシアターでかかっているけれど王道のエンタメでもウェルメイドな作品でもいいしそれが若手監督の作品であったとしてもいいじゃないかと思います。

 

 

ぜひ声高に言ってほしいです(笑)『Every Day』とかほんわかしたものをやっていますよ、という体でやっていますけど、そういう所は割とひねくれているというか。ミニシアターでこういうのやってないですよね?という部分で出していかないと結局同じようなものが集まってしまって、それでお客さんが来なかったら意味ないじゃんって思うので。他はそれでもいいけど僕はこれで行きますよと。それで少しでも興味を持ってもらって実際に劇場に足を運んでもらうっていうのもこの作品の役目の1つだと思っているので。

 

シネコンでかかっている大きな作品の体制も大事ですし、そうではない作品をかけている劇場さんとの両輪がある中で自分の作品はどういう位置づけなのか、というのは色々考えてきて。なので今までかけていただいた劇場さんにはとてもご理解をいただけてありがたいことだなと思っています。そこの部分をお客さんにまで伝えられたらいいんですけど。

 

いま僕は映画とは別の仕事もしているんですけど、そこの女性の同僚にスタッフになってもらったりしていて。彼女はシネフィルとかではないので、じゃあ例えば彼女が観たいと思って選べる映画にしないといけないなとは意識してやってきて。分かる人だけ分かればいい、っていうスタンスで映画を作ってはいないので。もしかしたら先輩方からしたらもっと別の方法がある、っておっしゃるのかもしれないんですが。

 

 左から、主人公・三井(永野宗典)と三井の職場の先輩・吉田さん(谷川昭一朗)。吉田さんも観客からの人気が強い。

多様性という言葉をはき違えると危ないと思っています。

--本当に今回は製作から劇場公開に至るまで、自分たちのやり方でやってきたんですね。

 

 

この作品に関してはそうですね。個人的には定食屋さんの気持ちでやっていて、観てもらうからにはお腹いっぱいになってもらいたいなと。そこに創作性あふれた高価な料理を出してほら食え!って言うタイプではないので。やっぱりお客さんの反応を一番大事にしていきたいですね。なかなかこういう考えを持った映画監督さんにお会いしたことはないです。

 

--映画が完成して、最初に劇場で公開されたのは東京のK’s cinemaさんですよね?

 

 

そうですね。その前に映画祭でまずお披露目という形になっているんですが。K’s cinemaさんでの公開が決まったのは今年の4月ぐらいです。

 

--K’s cinemaさんで公開が決まった経緯というのは?

 

 

宣伝担当が割とK’s cinemaさんに出入りしていて。売り込みをしてくれていたということですね。そこで初めて劇場のスタッフさんたちと接することになって。それまで支配人さんが何を考えているとか、オペレーションの方がどういう思いで作品を選んでいるとかはその時に知ったので。K’s cinemaの皆さんにはありがたいことに愛情を注いでもらったという感じです。

 

--なるほど。東京での公開を終えて、いよいよ地方上映に進んでいくわけなんですが、関西に限らず地方の映画ファン・映画館ファンのイメージ的に「まあ、東京でやったらお客さん入るよね」というのはあると思うんです。それこそ作っている人たちが住んでいる街だから。でもひとたび東京を飛び越えると完全にアウェーというか、味方がいないっていう状況だと思うんですけど。

 

 

確かに東京が終わってからは裸一貫でやっている、という感じです。でも、音楽のharuka nakamuraさんの全国にいるファンの皆さんの強さっていうのは大事にしていたし、京阪神で言うと永野さんが所属されているヨーロッパ企画というブランドの強さだったり、山本さんも大阪出身っていうのがあるので東京・大阪の公開は意識していました。

 

--K’s cinemaさんで公開している段階から京阪神の劇場にも打診をしていたんですか?

 

 

そうですね。支配人さんだったり劇場のスタッフさんの中でヨーロッパ企画のファンの方がいて、それで決まるっていうパターンもあるみたいです。

 

あとは、電話で営業をかけた時にサイトを見てくれる、予告編を見てくれる劇場さんっていうのは割と決まりますね。元町映画館の林さんもそうでした。電話で話してくれるとすごい助かります。特に関西の劇場さんに関しては、上映することを決断してくださったので自分たちも力を入れないといけないなと思っています。言ってしまえば自分自身が配給の立場でもあるので。

 

--監督自らが売り込むっていうのはあまりないように思うのですが。

 

 

やってみて思うんですけど、やらない方がいいですね、良くも悪くも(笑)ギャグでもあるし本気の部分でもあるし。今回に関しては僕は全ての工程をやることによって知るので。そこで学んだことを次の作品に生かしたいと思っています。だから『Every Day』は壮大な前フリだと思っていただいて、次の作品が作れたときには絶対今回お世話になった劇場さんに帰れるようにと思っているので。

 

--デビュー作で製作からプロモーションに至るまですべて自分でやってみるっていう事ですね。

 

 

やってみないと分からない、っていうバカみたいな部分があるので。それに今こうしてチア部さんに出会っているみたいに、この地域にはこういう人たちがいるんだっていうのは大資本の作品では知りえない部分じゃないですか。東京の後に名古屋と大分でも上映したんですけど、その時も劇場とその周りの人たちとの縁でこれまで繋がってきたので、それは大事にしていきたいですね。大阪・神戸の公開は本当に来てほしいと思っているので。

 

--なかなか若手監督さんでそこまで地方上映にこだわる方もいらっしゃらないんじゃないかと思うのですが。

 

 

どこまで考えてるんですかね?自主映画の監督たちがどう思っているのかというのは。映画をかけてもらえると思っているのかな?と疑問に思う部分もあります。

 

--同世代の監督さんでよく交流されている方はいらっしゃるんですか?

 

 

今年の東京フィルメックスで『任光の受難』が上映された庭月野さんですかね・・・。あんまり多くはいないです。多様性という言葉をはき違えると危ないなとは思っています。お客さんに観てほしいのか、自分の作りたいものを作って満足して、誰かに気付いてもらったらいいのか、っていう所は振り切らないで中途半端やってると作家性も大事だけど、多くの人に観てほしいっていうのは通用しないと思うので。

 

--映画に限らず、テレビも音楽も観ない聴かないっていう現状が続いていると思うのですが、それはつまり全体の中で共通の基盤がないっていうことなのかなと考えています。簡単に言うと小さい時に読んでいた昔話であったり、みんなが経験している気持ちいい物語のリズムがあればいいと思うんですけど、今それがないので。

 

 

型がないですよね。昔は師匠さんがいて、その型を学んだところからの発展があったんですけど、今は自己流ばっかりなのかなと思います、良くも悪くも。

 

--みんな足し算引き算を勉強してないのにいきなり因数分解から始めちゃうみたいな。

 

 

仕組みが分かってないのにやっちゃうってことですよね。映画に関して言うと、僕はデビュー作ってすごい華々しく行く、っていうイメージがあるんですけど。デビュー作っていう事はまだ誰も自分のことを知らないわけなので、それを観てもらおうと思ったら努力を惜しむべきではないと思うんです。それをやらないっていうのは撮れない人たちからしたらイラッとしますよね。1本1本の作品を観てもらうことに対してもっと時間をかけていいと思うんですけど、何もかも簡単になりすぎているのかもしれないですよね。上映だってボタンを押せば出来るし。

 

--ちょっと話が飛ぶのですが、僕は椎名林檎さんが好きなんですけど、あの人はインタビューで「誰が作ったか分からないような曲を作りたい」っておっしゃってて。椎名林檎が作ったから、とかではなく単純にその曲の良さだけで勝負したいということで。手塚監督も、例えば次回作がすごいバイオレンスな映画だとするじゃないですか。今回の『Every Day』を観てああこれが手塚って人が作った映画かーと思ったお客さんが、次の作品を観て「なんだよこれ、全然手塚っぽくねーじゃん!」ってならずに作品の良し悪しを観てほしいですよね。

 

 

僕の理想は、まず作品を観てもらってああいいなーって思ってもらって、あ、これ手塚って人が作ってるんだ、ぐらいに思ってほしいですね。「手塚監督が作ったから泣けるに違いない」とか思って来てもらうとちょっと困るので。作家性というところを勘違いすると、俺が作ったんだからこういう色でいいよね、分かんない人は分かんなくて結構ですっていうのは、あってもいいと思うけど名も無い人がやっても意味ないよねとは思います。

 

『Every Day』の作りに関しては、すごい間口を広げてるのでどうぞいらしてください、ただ奥深くまで入るには想像力使うところもありますからね、っていうところもあるので。多様性っていうところをきちんと意識して出来たらめちゃくちゃ面白いですけどね。『君の名は。』もいいし『シン・ゴジラ』もいいし。中でただ単に文句言ってるだけはおかしいと思うので。

 

--ミニシアターで自分の作品が上映されている人たちがそういうメジャー作品に対して「けっ」みたいな態度を取るのは何か違いますよね。

 

うがった見方なんかいらないですからね。理屈じゃないですし。私はこれが好きっていうのはあっていいので、否定するっていうのは良くないですよね。僕もまだ1本目なんですけど、もし仮に2作目3作目とスケールが上がっていくとしたら、シネコンでもできるしミニシアターでも出来るしっていうのがいいかなと思っています。

 

この時代フィルムじゃないんで、公民館でもどこでも行きます、という気持ちでいます。何だったら動画でもいいんじゃないかなと思っています。現状としてはやはり行けてない地方もまだまだあるので。劇場で観てもらうっていうのがもちろん理想なんですけど動画配信も否定はできないですよね。

 

--映画に限らずいまこれだけ色んな手段がある中で、映画館で映画を観るのはもちろん僕も好きなんですけど、それだけが絶対唯一っていうのは難しいかもしれないですよね。特に小規模な作品になればなるほど1週間限定上映とかがざらですから。

 

そうですね。なかなか劇場でかけていただいても観れなかった、という方も多くいらっしゃるのかなという実感はあります。僕の中で『Every Day』は来年の夏までが旬で出来る期間なのかなと思っているので、それ以降は動画配信をしてみてもいいかなと思ったりしています。あとは作品自体の貸し出しなども。まだ考え中ですが

 

--今のところ次回作の予定などは?

 

ないですね、ちゃんと決まったものは。体調を崩した時にもう『Every Day』で最後かなとも思ったんですけど、体調も治りまして、ポツポツとアイディアも出てきているのであまり時間をかけずに次の作品が作れたらいいなと思っています。『Every Day』に出ていただいた出演者の方も込みで次回作が撮れたらいいなというのが理想です。そして今回お世話になった劇場さんにはまた戻ってこれたらと思っています。

 

あ、でもいまオファーが来ているもので言うと舞台の映像のパートを撮ってくれ、というのがあります。声がかかって自分が出来るものに関してはなんでも打ち返すようにしたいなと思っています。

 

--もしかしたら次回作はジャッキー・チェンみたいなアクション映画を撮られているかもしれませんね。

 

そうですね、ホラーも撮っているかもしれません。必要とあらばユーチューバーにもなります、向いてないかもしれませんが(笑)

 

 

 映画『Every Day』予告編

 

 

 

■公開情報

『Every Day』

12/10(土)~12/16(金)1週間限定上映

大阪 第七藝術劇場 連日20:50~ 劇場公式サイト

兵庫 元町映画館 連日18:10~  劇場公式サイト

出演:永野宗典(ヨーロッパ企画)、山本真由美、倉田大輔、こいけけいこ、牛水里美、土屋壮、朝真稀、藤谷みき、谷川昭一朗、山内健司

監督:手塚悟

『Every Day』公式サイト

 

 

■PROFILE

手塚悟

山梨県出身。ジャッキー・チェンに憧れ、小学校の同級生と共に映画遊びをはじめる。2008年 第6回NHKミニミニ映像大賞に「サミット ニュース篇」が入選。2009年『つるかめのように』、2011年『こぼれる』がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭をはじめとする国内の映画祭に次々とノミネート・上映される。『Every Day』は2015年 第16回TAMA NEW WAVEのコンペディション部門にノミネートされた。(『Every Day』公式サイトより)

 

 

 

 

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