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映画『二十代の夏』 高野徹監督インタビュー(前編)

10.31.2016

11/5(土)神戸映画資料館での『二十代の夏』上映会に先駆けて、高野徹監督にインタビューをさせていただきました。

 

『二十代の夏』ストーリー

駆け出し小説家のカズキ(28)は新作執筆のため、故郷の島で夏休みを過ごしていた。ひょんなことから、滞在していたペンションの管理をカズキは任されることになり、宿泊客の女性・レイコ(28)とユカ(24)に出会う。カズキはレイコに昔付き合っていた女性の面影を見出し、いとも簡単に心奪われてしまう。ある晩、酒を飲んでいた3人はユカの奔放な振る舞いをきっかけに大きく衝突をはじめる。(公式ホームページより)

 

──どのようなきっかけで『二十代の夏』を制作されたのですか?

 

元をたどれば、ジャック・ロジエ、エリック・ロメール、ホン・サンスの映画などに影響を受けたからというのはあります。彼らの作品を観ていて、いつかこのような映画を自分でも撮ってみたいという気持ちをずっと持っていました。

 

2013年夏、伊豆大島に旅行へ行きまして、都会にはない豊かさ、自然だけでなく、人と人の結びつきというところに豊かさを感じました。例えば、島の人たち同士がいたる所ですれ違って、会話が生まれているのを目撃しました。僕自身はゲストハウスに宿泊したのですが、夜に一緒にお酒を飲んだり、会話をした人たちと港や温泉など色んな場所ですれ違って、それが何かおもしろいな、東京にはないなと思いました。この島の狭さは豊かさなんじゃないかなと感じて、ここであれば自分が撮りたいと思っていた作品が成立するのではないかと思い、企画を立て始めました。

 

──恋愛がテーマなのは、ジャック・ロジエなどに影響を受けたからですか?

 

彼らは「ヴァカンス」というシチュエーションで映画を撮り続けています。どの映画も島だったり、海辺の町で出会った男女がかりそめの様な恋をして、結局実らないで終わるという話ばかりです。何か恋愛や若さということを問い続けているような気がします。僕自身も恋愛や女性に対して、疑問というかわからないことがたくさんあって。これって映画を撮れば少しはわかるんじゃないかなと思って、恋愛について、女性についての映画を撮ろうという風に思いました。

 

──テーマが制作の過程で「女性のわからなさ」から「男性の未熟さ」に発展なさったそうですね。映画を拝見させていただき、私も主人公の男性の気持ちに共感するところもありました(笑)。特に映画の中の監督と主人公カズキが、石を投げながら語る場面です。

 

本当ですか、嬉しいです。

 

──特にこだわりのあるシーンはありますか?

 

今おっしゃっていただいた場面は、伊豆大島の「裏砂漠」という国土地理院に唯一砂漠として認定されている場所で撮影したもので、そのシーンには結構思い入れがありますね。撮影期間が15日間あった中で、14日目に半日スケジュールが空いたんです。その時に何か撮りたいなと思い、役者さんとディスカッションしながら即興的にメモ書き程度の脚本で撮影しました。半日でワンカット撮れればいいやと思って、何回も何回もトライしました。撮影は夏だったんですが、そこは標高が高くかなり寒かったです。

 

──(観ていても)風がすごかったですね…。

 

役者さんの上着を持ってきていなかったので、ぶるぶる震えながらも、もう一回もう一回と撮影しました。スタッフも半ばあきれながらでしたが、最後まで粘り続けましたね。ある映画監督に「あんなマジカルなカットはなかなか撮れない」とおっしゃっていただいてそう言ってもらえるようなカットが撮れて本当に良かったと思っています。

 

──役者さんの自然な演技はアドリブっぽく見えるところもありました。どのように演出なさったのでしょうか?

 

かなり試行錯誤をしました。僕が助監督として参加した映画『ハッピーアワー』(濱口竜介監督)の方法論を参考に演出を考えました。濱口監督が役者さんに対して徹底的にやっていた演出というのが、「本読み」なんですけれども。

 

──「本読み」、ですか?

 

はい、長いシーンだと、撮影前日に役者さんを呼んで朝から夜まで一日かけて「本読み」を延々とやっているというようなことをしていて。実際皆さん演技経験がない方がほとんどでしたが、カメラの前で本当にすばらしい演技をするわけですよね。なにかこの「本読み」に秘密があるのではないかと思って。どうなるかは全く分からなかったのですが、本読みをやってみようと思い、なるべく時間を設けることにしました。撮影に入る前に一週間、時間をもらったのと、各シーンを撮る前に最低でも30分ぐらい「本読み」をしました。

 

濱口監督はジャン・ルノワールの「イタリア式本読み」を参考にして本読みを行っていたそうです。これは濱口監督の「カメラの前で演じること」という本の中に詳しく書かれています。電話帳を読むように抑揚をなくして、書いてあるテキストをただただ相手に伝えるように読むというやり方です。それが演技の助けになるのかなと思ってやってみたのですが、いまいちうまくいっているようには思えませんでした。むしろ逆に役者さんの演技を縛っているのではないかなと途中で気がつきました。方法論だけマネてもダメですね。

それに気づいてからは、もう少し自然にセリフが体になじむように「本読み」をするようにしました。それ以降、役者さんたちはいきいきと演技してくれたのではないかなと思っています。

 

また撮影の半分を過ぎた頃から、役者さんとよく話すようになりました。役者さんたちは撮影が終わってから、その日の反省会や次の日のシーンを毎晩、話し合ってくれていて、翌朝に分からないことを質問しに来てくれるようになりました。「一緒に考えましょうか」と言ってお互い納得のいくまで話し合いました。そういうことをし始めてから良いシーンが撮れているという実感が出てきました。

 

──映画『二十代の夏』をどんな方に観てほしい、またどういう風に届いてほしいですか。

 

そうですね、基本的にはどんな方にも観ていただきたいのですが、強いて言うならば学生の方に観てほしいなという気持ちはありますね。映画にも色んな種類がありますが、僕が撮りたい映画というのは、なにか観る人の人生に関わるような映画でありたいと思っています。と言ってもノスタルジーの対象、過去を振り返ってこの気持ち懐かしいなという受け取り方ではなくて、観た人の今後の人生に少しでも持って帰ってもらえるような映画、未来に向かって開かれた映画でありたいという思いで作っています。

 

今回の『二十代の夏』に出てくる人たちは、学生さんたちの数年後にあたるもうすぐ三十歳の方々が出演していて、恋愛を繰り広げます。観てくれた方が「俺はこんな風には絶対なりたくない」とか「夏に島に行ってこんな風に女の子に茶化されたい」とか、そういうことを感じていただけたら嬉しいですね。

 

──映画『二十代の夏』のこれからと、高野監督が今後考えていることがあれば教えてください。

 

今回は伊豆大島、神戸、横浜での上映なのですが、その後は海外の映画祭に持っていきたいなと思っていて、英語字幕をつける作業をしています。運よく海外の映画祭で上映してもらえることになったら、文化や価値観の全く違う人たちに観てもらえることになるので、反応がすごく楽しみです。

また僕自身は、いつになっても映画を撮り続けたいという思いがあります。それって結構大変なことなんじゃないかなと思っています。例えば基本的に映画撮影は他人に迷惑をかけることが多いので、友達なんかすぐにいなくなってしまいます(笑)。人の善意を裏切ってしまうことが日常茶飯事です。ぼくにとってそれはなかなか辛いことで映画なんか撮らなきゃよかったと思うこともあります。でも映画を撮り続けることでしか生きていけないので、映画が観客に届くまでひとつひとつ頑張っていこうと思います。

■PROFILE

監督・高野徹

1988年生まれ。横浜国立大学大学院都市イノベーション学府修了。2010年に監督した『濡れるのは恋人たちだけではない』が、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭や北京獨立電影展など、国内外の映画祭に出品され高い評価を得る。濱口竜介監督作品『ハッピーアワー』では助監督を務める。

 

■『二十代の夏』公式サイト | http://summer20s.tumblr.com/

■『二十代の夏』facebook | https://www.facebook.com/filmoshima/

■『二十代の夏』Twitter | https://twitter.com/filmoshima

 

 

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